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THEプロフェッショナルインタビュー1月号 バー武蔵/東京・銀座 武蔵昌一氏


バー武蔵/東京・銀座 武蔵昌一氏

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暖かさと優しさに満ち溢れた、バー武蔵から始まる物語
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銀座8丁目の交差点の程近く。重厚な木製の扉にほんの少し気後れする。扉を開くと、まっすぐな階段が下へと延びている。

 たどり着いた「バー武蔵」の店内は、地下にある店とは思えぬほど広々としている。花梨の材を用いたカウンター。カフェを思わせるようないくつかのテーブル席。奥には背の低いソファー席まで。入り口に立ったときに感じた緊張がスッとほどけていくような、開放感すら味わえる雰囲気に包まれている。

 カウンターの向こう側では、笑顔を絶やさぬ明るいスタッフたちが出迎えてくれる。必要以上に飾ることなく、ありのままのスタイルでリラックスすることができるのが、バー武蔵が愛される理由なのかもしれない。

この店のほかに、3つのバーとイタリアンレストランを束ねるのは、オーナーの武蔵昌一さん。武蔵さんは、バー武蔵のあり方を、古い格言を引き合いに出して表現する。

「欧米では、『悩み事があったら教会へ行け。それでも解決しなかったら帰りにバーに寄れ』と言われます。それはなぜか。悩みを聞いた牧師さんは、『神を信じなさい』『がんばって解決しましょう』としか言えませんよね。でも、バーテンダーは『人生そういうもんだ。しょうがないよ』って言えるんですね。そして『まぁ飲みなよ』と(笑)。そうやってざっくばらんなコミュニケーションが取れる場所がバーなんです」
入り口
店内
カウンター

重厚な壁を開きたどり着くと
そこには開放感ある店内が広がる。


 バーテンダー歴20年を越える武蔵さんがこの道に興味を持ったのは、10代の後半。喫茶店でアルバイトをしていたときに、お客からかけられた言葉がきっかけだった。
「話したこともないお客様に『キミの淹れたコーヒーはおいしいな』と、突然言われたんですね。それが嬉しかったのかな……。その後お酒に興味を持って、大学時代はバーテンダーのようなアルバイトもして。いつしかこの業界に入っていました」

 大学卒業後は決まっていた就職も袖にし、勘当覚悟でプロの道を選んだ。酒に触れること、お客と接すること。何もかもが面白く、充実していた。若き日の思いは、誰もが認めるトップバーテンダーになった現在も忘れることはない。仕事を楽しみ、会話を楽しみ、場の空気を楽しむ姿勢がスタッフに受け継がれ、店全体に浸透し、バー武蔵の雰囲気の源になっているのだろう。


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「情報の集約する場所」バーの便利な活用法
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武蔵さん1

 武蔵さんは、バーを「便利な場所」と評する。あらゆる情報の集約する場所で、お客はそこで有益な情報を引き出すことができるという。

 「例えば、新しい土地に引っ越したり、知らない町を訪れたりしますよね。そこでその町について知りたければ、バーに行けばいい。いい床屋はないか、おいしい食事ができる場所はないか、どのへんで遊んだらいいか、その町ならではのお得な情報などなど。気軽にバーテンダーに尋ねればいいんです。もしくは、カウンターに座っている地元のお客さんに聞いてもいい。生の情報が手に入りますよ」


 酒を通じた会話だけが、バーの会話ではない。ちょっとした町の話題から、深い悩み事まで。バーテンダーは優しく受け止めてくれる。

 「コミュニケーションの手法を学ぶ場でもありますよね。1対1の対話もそうですが、3角形のコミュニケーションも大切。

例えば……そうですね、カップルのお客様が来られたとしましょう。男性は女性に言いたいことがあるけれど、直接は言いづらい。そんなときは、第三者であるバーテンダーにそれとなく言ってみる。『オレはこう思うんだけど、どう思う?』みたいに。バーテンダーは自分の考えを言いますね。あくまで空気を読みつつ(笑)。その会話はそれとなく、女性のほうにも伝わるわけです。直接言うよりソフトな感じで。

隣に座った見知らぬ人とコンタクトを取りたいときに、バーテンダーをうまく使うというのもアリですね。そういった会話の楽しみ方ができると、バーの利用の仕方も膨らむと思います」

 「バーは堅苦しい場所ではありません。気軽に会話を楽しみ、時間を楽しむ場所です。『ちょっと時間があるから』というときにふらっと立ち寄れるような……。もっともっとこのカルチャーが広がってくれれば嬉しい。イギリスのパブのような存在になれたらいいですね」


 リラックスできる上質な時間を楽しむためには、馴染みの店が欲しい。そのためにはどうすればいいのか。

 「よく言われる『バーの敷居』は、高くないほうがいい。けれど、全然無いのも良くないと思います。さっきの教会とバーの話ではないですが、そういう悩みや重たいテーマを、敷居の無いようなところで話す気にはならないと思うんです。パワーを使ってある程度の敷居を越えてでも馴染みになった店でこそ、話せることがある。ハードルを越えて得られるものをぜひ味わって欲しいですね」

武蔵さん2
武蔵さん3
武蔵さん4
武蔵さん3

カクテル  
バーは最高の社交場。バー武蔵でしか味わえない
カクテルを会話と共に楽しむ。

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多忙なオーナーが見出す「夢の続き」
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 いまや5店舗の店をまとめ、20人あまりのスタッフを抱えながら、忙しい毎日を送る武蔵さん。その視線は常に前を向き、生きる楽しみに満ち溢れているようにも見える。

 「若いころの夢は今よりはるかに単純でしたね。今は責任もあるし、一人だけの夢を見ているわけにも行かなくなってきたかな(笑)。あえて言うなら、“夢の続き”を見てみたいとは思います。店が増えるだとか人が増えるだとか、成功するというようなことではなく、自分が始めなければ生まれなかった物語の続きを見てみたい、ということ。自分の周りにいる、いろいろな個性を持った人間が、それぞれにどんな物語を紡いでいくのか。それを見ていたいですね」

 武蔵昌一演出による、銀座を舞台にしたバー武蔵の物語は、多様な広がりを見せながら、これからも続いていく。

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2008/01/31 16:02

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