
THE PLACE/東京・広尾 山本隆範氏
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バーテンダーの道へ進むことになった、人生を変えるひと言
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「君は裏向きの顔をしていない。今は口下手かもしれないけれども、鍛えればお客様をひきつける魅力がある」
THE PLACEのバーテンダー、山本隆範氏がバーという世界へ飛び込んだのは27年前の事だ。山の上ホテルに就職し、山本氏が希望した部署は厨房である。ところが、配属されたのはバーであった。当時のスタッフの中では、群を抜いて若く、やることといえば水や灰皿を変えることが主な仕事だ。しかしながら、少しずつバーテンダーという仕事の魅力に惹かれていったという。そんな中、当時の山の上ホテルの社長に言われたのが、上記の言葉であった。
「今にして思えば、社長の言ったことは当っていたかもしれませんね」
と、山本氏は笑顔をみせる。
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『THE PLACEバーテンダー山本隆範氏』 |
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下積みが続いた後、カクテルを作成するなど、バーテンダーという仕事を少しずつ任され始めた。先輩方はなかなか厳しかったようである。
「ジン、ラム、ウォッカ、テキーラといったスピリッツのスタンダートカクテルのレシピを全部覚えて来い。と言われてそれが終わったら、ウイスキーの勉強。次から次へと課題を出されて、覚えるのに必死でした」
厳しいのは先輩だけではなかった。ある日、外国人のお客様に「日本人なのに日本酒も知らないのか」と言われて、日本酒の勉強をしたり、ワインブームの到来でワインを必死に覚えたりという日々が続いた。
「本来、私はお酒を飲めませんでしたし、両親も晩酌をする家庭ではなかったのです。だからこそ、お酒を飲むという文化を全く知らず、未知の世界でしたので、興味が出てきました」
ホテルマンとして、他のホテルへ勉強をかねて、視察も行った。
「ホテルで一番気合の入る時間は、朝です。ですから、敢えてタクシーで乗り付けて、朝食を食べにいったりしました。ドアマンやベルボーイの声の掛け方で、お客様の気分はずいぶん異なる。いつも同じ『いらっしゃいませ』という言葉ではなくて、状況に応じて変えるなど勉強になりました」