2015年10月30日コーヒーやハーブの香りがそよぐスタンダードカクテルをモダンに楽しむ
〜東京・渋谷 BAR EL CALVADOR(バー・エル カルバドール)
バーの扉とは、慣れない人にとってはなかなかの敷居の高さがあるものです。
初めてのレストランには気軽に入れるのに、
バーとなると緊張してしまうのはなぜ?
この連載で、自分なりに気づいたその理由は
単純ですが「店内の様子が、外から見えないから」。
そして、レストランは何々料理を食べる、という明快な目的があるから
店内の様子を伺えない場合でもバーほど身構えることがないのです。
思い切って入ってみれば、店の雰囲気がわかり、
バーテンダーさんと一言二言でも会話をすればホッと気持ちが和むもの。
そうなると2回目は驚くほど入りやすくなる、これは
銀座でも赤坂でも、場所は関係ありません。
だから大切なのは、仕事場と自宅の間の立ち寄りやすい場所に
自分の肌に合う、寛げるバーを見つけること。
疲れた仕事帰りでも、飲み足りなかった会食の後でも
バーでしか味わえない本格カクテルをいただけば、
明日もまた頑張ろうという元気が湧いてきます。
今回は渋谷のハチ公口を出て歩くこと5〜6分、
東急文化村からわずかの場所にあるバー。
目立つ看板がないのでやや緊張しますが、
扉を開けるとオーナーバーテンダーの
渡辺高弘さんが「いらっしゃいませ」と、この笑顔で迎えられます。
スペインの無敵艦隊から名づけられたというバーの店内は、
古い絵などが飾られ、落ち着いた空間。
カウンターに加え、ゆったりしたテーブル席もあります。
渡辺さんは18歳で京王プラザホテルに入社し、バーテンダーとして育てられ、
27年の勤務ののち昨年退職、バー勤務を経て今年独立されました。
「ここはわたしにとってアトリエのような空間。
〝クラシック&モダンカクテルズ〟をテーマに、
昔ながらのカクテルをブラッシュアップさせて
新しい味を構築する実験を常におこなっています」と渡辺さん。
その言葉通り、カウンターにはフレッシュハーブやスパイス、
すり鉢、それにコーヒーポットまで、バーではあまり見かけないものがずらり。
ハーブやコーヒーが好きであることを伝えると、
まず作ってくださったのは「ゴッドファーザー コーヒーフレーバー」。
シングルグレーンウイスキー「知多」と
リキュール「ディサローノ・アマレット」をステアした
カクテル「ゴッドファーザー」をそのまま深煎りのコーヒーにドリップし、風味をつけます。
コーヒーを淹れる要領でカクテルをドリップさせるとは、驚き!
しなやかな「知多」の味わいに
アマレットの杏仁豆腐のような甘い香りが溶け込んだなかに
コーヒーの風味が寄り添い、おいしい!
「さまざまな種類のお酒とコーヒーで試したのですが、
クセのないストレートな味わいの『知多』が深煎りのコーヒーに
よくなじみ、互いを引き立て合う仕上がりになりました」(渡辺さん)。
見た目はシンプルですが、お酒とコーヒーが好きな女性には
受けること間違いなしです。
続いて「ネバダ ハーブ風味」。
シェーカーにフレッシュなレモングラスとレモンバーム、タイム少々を入れ、
液体窒素を加えて一気に凍らせ、低温抽出します。シェーカーから冷気が!
そこにホワイトラム「ブルガル エクストラドライ」、
フレッシュグレープフルーツジュース、ライムジュース、
ホワイトキュラソー、アンゴスチュラビターズ、
ライムコーディアルを加えてシェーク。
のどの渇きを癒すように爽やかな「ネバダ」の味わいに、
フレッシュハーブが鼻をくすぐり、一度飲んだら忘れられない感覚。
「ハーブの香りは繊細ですが、液体窒素を使うことで
そのフレーバーがうまく抽出されます」(渡辺さん)。
ドリップ、急速冷凍、燻製、ミル(挽く)などの手法を素材に合わせて
使い分け、香りを引き出し、カクテルに合わせていく。
渡辺さんのホテルバーテンダーとして積み上げた経験と知識に
独自の感性が融合した、ここでしか味わえないカクテルを堪能しました。
もちろん、本物の酒好きが喜ぶスタンダードカクテルにも定評あり。
独立して自由を楽しんでいるという渡辺さんのヘアスタイルも楽しみに
(あえてお見せしませんが、後姿を要チェック!)
ぜひ、訪ねてみてください。
<紹介カクテルの価格とお店データ>
DATA
ゴッドファーザー コーヒーフレーバー 1,500円
ネバダ ハーブ風味 1,500円
※別途チャージ 1,000円
BAR EL CALVADOR(バー・エル カルバドール)
東京都渋谷区円山町1-3 SKビル4F
TEL 03-6427-8003
19:00〜04:00 不定休
https://bar-navi.suntory.co.jp/shop/0X00401506/index.html