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2008年10月21日THEプロフェッショナルインタビュー10月号  銀座サンボア/新谷 尚人氏


銀座サンボア / 新谷 尚人氏


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バーの原型はスタンディングである
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関西で10軒を構えるバー、サンボア。バーが好きな関西人なら、1度は門をくぐり、名物のハイボールをひっかけたことがあるはずだ。北新地サンボアのオーナーである新谷尚人氏が、銀座サンボアを開店したのは2003年7月。スタンディング形式、午後3時から開店、65歳以上は6時までドリンク半額になるハッピーアワー、オーセンティックな内装、チャージ無しなど、北新地のサンボア・スタイルはそのままだ。
  銀座 サンボア 銀座サンボア

『北新地・銀座サンボアバーオーナー新谷尚人氏、ある日の銀座サンボアバーでの風景』


新谷氏がバーテンダーになった時のエピソードはユニークである。

学生時代、新谷氏は雑誌でバーテンダー鍵澤正男氏の写真を見た。臙脂(えんじ)のジャケット姿に一輪のバラを胸にかざし、カウンターの迎い側に凛として立つ姿。その様子に感銘を受けた新谷氏は、「サンボア」に深い憧れを持つ。やがて、アルバイト情報誌に「南サンボア」のバーテンダー募集の文字を見つけた。引き寄せられるように、そのドアを叩くこととなる。そして採用決定との通知を受けた数日後、新谷氏は衝撃的な事実を知った。

実は、新谷氏が採用されて入店した「南サンボア」のバーテンダーは鍵澤時宗氏。雑誌で見たバラの花を胸に挿したバーテンダーではなく、その弟であったのである。
「容姿は良く似た兄弟でしたが、性格は全く違う。兄である鍵澤正男さんは、律儀で真面目でキッチリとした人。私の師匠である南サンボアのオーナー、時宗さんは、やんちゃで大らかな人柄でした。私には弟の方が合っていたようです」

ともあれ、新谷氏は、バーテンダーとしてのキャリアを、南サンボアからスタートさせた。

「サンボアでは、最低10年修行して、サンボア各オーナーの承認を得ると暖簾分けが許される。ですから、10年というのはひとつの節目であると考えていました。94年10月に北新地サンボアを開店、その9年後には銀座サンボアを開店しました。関西にはすでにサンボアが何店舗かありますから、次のマーケットは銀座にあると考えました」

銀座 サンボア 銀座 サンボア

【山崎のオーナーズカスク。左はサンボア全店で購入。
右は北新地と銀座サンボア限定。全く異なるタイプの2種が楽しめる】

銀座店は20坪の規模。北新地サンボアと同様、カウンターはスタンディング形式だ。カウンター手前には、斜めに肘掛けのスペースがあり、立って軽く肘をかけても格好がつく。カウンターの下側には、もうひとつの仕掛けがあった。

「万が一酔っ払った際、人はどこかにつかまろうとする。カウンターの下には返しがあって、とっさの際はつかまることができるようになっています」

スタンディングにする際、設計士からは土地効率が悪いと言われた。新谷氏は、「スタンディングがバーの原型。お客様をイスにしばりつけておくことはない。」と言って、ゆずらなかった。スタンディング・スタイルの良さは、混雑した際にもちょっと詰めて貰えれば、何とか入店して頂けることがあげられる。

「混雑時には、”ダークダックス”でお願いします」というのは、大阪の立ち飲み店での合い言葉である。体を斜めにして、片足を前に出せば、人数が増えた場合でも席につくことができるという大阪らしい洒落だ。中には、「もう出るよ」と言って、サッと残りのグラスを飲み干して立ち去る、粋なはからいをする常連客もいる。また、バーで知り合いの顔を見つけても、カウンターの端で声をかけるのは無粋だ。スタンディングであれば移動して、声をかければすむ。3~4人の場合は、2人がカウンターにつき、1~2人が向かい側に回ればいい。フレキシブルに利用できるのが醍醐味である。
 

銀座サンボア 銀座サンボア

【カウンターはスタンディング形式。また、店内奥に飾られる絵画は、松井ヨシアキ画】

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バーで格好良く振舞うこととは、周囲への思いやりを持てること
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最近は、バーに来店する若いお客様が減っているといわれている。理由をきくと、怖くてなんとなく入りづらいという声をきく。

「バーの敷居は高い。ですから、その場にふわさしい服装で来店するのは当然です。現在20歳の方でも20年後は40歳でしょう。場に馴染めるようになるのが、その人の成長に繋がるのです」

新谷氏は、ごくたまにお客様に注意することがある。
「例えば年上の方に連れられて来たお客様が、『何になさいますか』と年上の方に聞いているのに、『○○をお願いします』と先にオーダーしてはダメです。それから、先日オイスターを仕入れたのですが、あるお客様が気に入ってそればかり食べる。お金を払っているからいいのではなくて、仕入れの量は少ないわけですから、他のお客様のために残しておくという配慮も必要なのではないでしょうか。」

バーで格好良く振舞うことというのは、決してウイスキーやカクテルの知識をひけらかすことではない。パブリックスペースで、相手に対する気配りができることであると新谷氏は語る。

「ウイスキーでもね、ポットスチルがどうのとか言うお客様がいるけれども、そうではなくてウイスキーを取り巻く映画や音楽、文学などの文化を含めて、シンプルに楽しめばいいと思う」

銀座サンボア 銀座サンボア 銀座サンボア

【国産ウイスキーと共に歩んできたサンボア。その歴史が感じられるハイボール。】


インタビュー後に、同店の名物、ハイボールを頂いた。取り出したのは、ハイボール特注グラス。グラスの側面についた印の位置までサントリー角瓶を注ぎ、ソーダ瓶を垂直に立てて注ぎ込み、レモンピールで香りをつける。国産ウイスキーの歩みはサンボアの歩みでもあり、そんな歴史を背景にしたハイボールであるからこそ、訪れる全てのお客様を魅了する。

銀座サンボア
【サンボアのロゴを入れ、ウイスキーを注ぐ量の印がついたオリジナルグラスで提供】


  銀座サンボア   

  店舗情報                                     
    住所 :東京都中央区銀座5-4-7 銀座サワモトビルB1F
    電話&FAX :03-5568-6155
    営業時間 :15:00~24:00(月~土) 15:00~22:00(日・祝)
    定休日 :無休
    HP :http://www.samboa.co.jp/

  メニュー                                      
     チャージ 無し
     サービス料 無し
     チャーム(ナッツ) 320円
     サントリー角(W) 1,050円
     響17年(W) 2,100円
     バランタイン17年(W) 2,630円
     山崎12年(W) 1,890円
     白州12年(W) 1,890円
     ザ・マッカラン12年(W) 2,100円
     グレンフィディック12年(W) 2,100円
     ボウモア12年(W) 2,100円
     ラフロイグ10年(W) 2,100円
     カクテル 1,160円~
     オイルサーディン 950円
     自家製ビーフジャーキー 740円
     自家製レバーペースト 740円
     100%ビーフハンバーガー 1,470円
     ビーフカツ サンドウィッチ 1,890円


■バックナンバー
2008年9月:バー コレオス/東京・渋谷 大泉洋氏
2008年8月:Ester/東京・中野 伊原孝樹氏
2008年7月:THE PLACE/東京・広尾 山本隆範氏
2008年6月:BAR東京/東京・銀座 八巻博和氏
2008年5月:Bar HEATH/東京・国立 大川貫正氏
2008年4月:BAR 保志/東京・銀座 保志雄一氏
2008年3月:石の華/東京・渋谷 石垣忍氏
2008年2月:MONDE BAR/東京・銀座 長谷川治正氏
2008年1月:バー武蔵/東京・銀座 武蔵昌一氏
2007年12月:スペリオ/東京・銀座 吉田均氏
2007年11月:銀座 ガスライト/東京・銀座 井口法之 氏
2007年10月:AW(アウ)/東京・渋谷 人見清子 氏
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