2010年1月21日CAPTAIN'S BAR(キャプテンズ・バー) /北海道・オーセントホテル小樽 野田 浩史 氏 ~THEプロフェッショナルインタビュー~
CAPTAIN'S BAR(キャプテンズ・バー) /
北海道・オーセントホテル小樽 野田 浩史 氏
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情緒あふれる小樽の街でゆっくり流れる大人の時間
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古きよき時代の空気が今も変わらず流れる小樽の街。その中心に位置するオーセントホテル小樽の1階に「CAPTAIN'S BAR」はある。ホテルのメインバーらしい落ち着いた趣でありながら、この地で感じるどこか懐かしいノスタルジックな気分をそのままにくつろげる空間となっている。
世界を旅する客船「パシフィックヴィーナス」をモチーフに、船長がゲストを招く場所をイメージし作られた店内。そのコンセプトから「キャプテンズ・バー」と名づけられた。
店内の窓は縦の楕円形にかたどられ、床にはバルト海クルーズの海の色「コバルトブルー」のカーペット。まるで豪華客船の船室にいるような重厚感が漂っている。旅をする人たちや、小樽を故郷としこの街に帰ってくる人々を、あたたかく迎えいれてくれる港のようなバーだ。
マスターバーテンダーの野田浩史氏(同ホテル料飲部副支配人)は北海道に生まれ、幼少期は道内で過ごしたという。早くに故郷を離れ単身で東京・京都と渡りバーテンダーとしてのスキルをひたすらに磨いた。
「若い頃家族の近くに居られなかったのですが、北海道に再び戻った時には、縁あって小樽でお仕事をいただきました。そしてそれからは家族の近くで時を過ごすことになったのです。不思議な絆を感じます」。
同店のコンセプトは野田氏自身の想いとも重なり、「お客様が帰ってこられる場所」として、現代のせわしなさには流されずゆったりとした時間を刻んでいるようだ。
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NOSTALGIA ~あたたかくて、甘く切ない味~
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野田氏の「ノスタルジア ~郷愁~ 」はこの店の代表的な逸品。雪がちらつくこの季節、小樽運河の景色はいつも以上にロマンチックなムードをかもしだす。その風景を彷彿とさせる白い雪の舞うカクテルだ。
ベースとなるのは2009年のニューフェースで、多彩なモルト原酒がブレンドされた「響12年」。クリーム系リキュールの甘さと少し苦味のあるエスプレッソコーヒーがブレンドされる。
最後に白く柔らかいフレッシュクリームが積もる雪のようにあしらわれ粉雪が舞いおちる。見た目にも美しく「雪」そのもののもつ不思議な「冷たさ」と「あたたかさ」がグラスの上でも見事に表現されている。
小樽に帰ってきたお客様に甘く切ない郷愁を感じて欲しいという野田氏の想いがつまったカクテルだ。
もうひとつのお勧めは「ダイヤモンドモヒート」。野田氏がつくるモヒートにはダイヤモンドが一緒についてくるという。遊び心もあって、目にも楽しいカクテルだ。
グラスの表面と内側を同温にすることで作られるダイヤモンドのように輝くグラス。トップには金粉がちりばめられ爽やかな香りと共に提供される。メニューには載っていない特別な一杯である。
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数々のカクテルコンペに出場し見識を深める
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社団法人日本ホテルバーメンズ協会 (HBA-Hotel Barmen's Association. Japan)認定のマスターバーテンダーでもある野田氏は、自己啓発にも努め長年様々な大会に出場している。
2004年にはアジアパシフィックバーテンダーオブザーイヤー日本代表に選ばれ、2005年にはPBO(NPO法人プロフェッショナルバーテンダー機構)のMVB(モストヴァリアブルバーテンダー)を受賞。その他功績は数多い。
バーという舞台でお客様との出会いを大切にする傍ら、多くの大会への出場を通しそこでの出会いからも、物事を深く見通し本質をとらえるための経験とスキルを得た。現在、札幌ビジネスアカデミーのホテル科で教鞭もとり、若手育成にもその力は余すことなく注がれている。
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おもてなしの心と志
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京都で働いていた修行時代はカクテルなど実際に作らせてもらえなかったという。グラスを磨いて氷を用意、ジュースを絞ってスタンバイばかりの同じ毎日の繰り返しだった。しかしその経験が今も全てのベース、振返れば得がたい時間だったと野田氏は語る。
「全ては段取りが八分。備えがどれくらいあるかで残りの二割が変わってくると思っています。10人お客さまがいれば10通りの挨拶がありますし、お客様をどれだけおもてなしできるかは事前の準備で決まります。この事は仕事に限らず、考え方や生き方に広く通じると思っています」。
バーテンダー以外にも、スクールの教師として朝の挨拶から学ぶこともあり、料飲部の副支配人として学ぶ経営学もあるという。多忙だが充実した毎日を送る野田氏。
「人はそれぞれ傷を持ってBarに足を運んできます。私自身も弱い部分やコンプレックスはありますし、それは毎日の出来事からしか補えない。補い続けていくことで人に必要とされる存在でありたいと思っています。
そうすることが単にバーでお客様を待っているということではなく、待てる人であるということにつながり、こちらから迎えに行くような気持ちでここにいます」。
寒さが日ごとに厳しくなる師走の小樽であたたかさを感じられるバー、この地に立ち寄ればまた扉をあけることだろう。
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